2017年10月29日、サントリーホールで行われたイツァーク・パールマンのヴァイオリンリサイタルに行ってきた。いつもCDでしか聞くことのできない巨匠の演奏を間近で聞くことができるのはかなり貴重な経験である。生の演奏はCDで聞くよりもとにかく柔らかく深みのある音色で「あたたかいアットホームな演奏」といった印象だった。とても素晴らしかった。
メインプログラム
- ヴァイオンとピアノのためのソナチネ 第1番 ニ長調 作品137-1 D.384(シューベルト)
- ヴァイオリンソナタ 第9番 イ長調 作品47「クロイツェル」(ベートーヴェン)
- ヴァイオリンソナタ ト短調(ドビュッシー)
感想云々
コンサートで自分がよく知っている曲の演奏を聞くのは楽しいが、知らない曲を開拓できるのもまたいいところ。コンサートの醍醐味のひとつだろう。プログラムの中で特にお気に入りだったのは、やはりベートーヴェンのクロイウェルだろうか。トルストイの小説のもとになっていたり、最近ではアニメにも起用されたりと、とにかく知名度の高いクロイツェル。自分もヴァイオリン曲の中でも、クロイツェルは特によく聞く。これをパールマンが弾くと、今まで聞いたことのないような演奏になる。まるで全くちがう曲を聞いているようだった。
クロイツェルは冒頭の重厚な和音が特徴的だが、まずこの和音が心地良い。繊細な序奏に聞き入ってしまい、思わず息を止めてしまうほどだった。中間部は高度な技巧が出てくるこの曲だが、パールマンは超絶技巧を涼しい顔であまりにもなめらかに弾きこなしてしまう。そのフレーズが過ぎ去ってから超絶技巧であることを思い出すくらい自然な演奏だった。
そして当日演奏されたヴァイオリン名曲集はこちら

クロイツェルがお気に入りと前述したが、この名曲集の数々も良かった!これらの曲は当日、パールマン直々にアナウンスされたものである。中でも良かったのがJ.ウィリアムズのシンドラーのリスト。スティーヴン・スピルバーグ監督による映画作品に登場する曲だが、実は生で聞くのはこれが初めてだった。決して長くはない曲だが、その中にも戦争の冷酷さ、虚しさ、そして悲しさが凝縮された演奏だった。そしてパールマン自身も、とりわけ強い思い入れがあるように弾いている印象だった。聞き終わったあとも、曲中の切ないメロディが頭の中をループし、自分は長らく余韻に浸っていた。
終わりに
イツァーク・パールマンはその演奏技術はもちろんだが、演奏のひとつひとつに彼の人間性が垣間見えて、演奏中はなんとも言えない安心感に包まれているようだった。それにしてもヴァイオリン曲はやっぱりいい。ピアノ曲だけでなく、ヴァイオリンの曲にもたくさん触れていきたいものである。
それでは。