困ったらいつでも基礎へ | 石の方向養成トレーニング #62

 長年対局していて、未だに石の方向がわからなくなる時がある。これは自分の勝手な想像だが、石の方向の基礎は初段になるくらいまでに身につけるのがきっと普通なのだろうと思う。現在の自分の棋力は五段程度である(と思っている)。野狐囲碁や東洋囲碁では五段でなんとか食らいついており、ローカルの碁会所だと六段相手に勝率トントンといった感じだ。
 一方で自分は五段レベルとはいえ、基礎が完璧に身についたうえでの五段とは言い難い力碁である。プレースタイルはいわゆる「ハンマー」というやつで、とにかく相手の石を攻め立て、相手の大石を取ることができれば勝ち、取られなければ(ほぼ)負けという、食うか食われるかの戦いが多いのだ。そんな自分の力碁を終局後にAIに読み込ませてみると、序盤であっという間に悪くなっている場合が多い。本来棋力に対してあってはならないことだが、その原因は石の方向の未熟さにあると思い、手を出したのが本書だ。棋力が上がっても、いつでも基礎に立ち返りたいものである。

読んだ本

  • 石の方向養成トレーニング
  • 著者:マイケル レドモンド

感想云々

隅の高い構えは、辺のヒラきと組み合わせる

 自分の悪い癖としてあるのが、いつもこの考えを守らないことである。途方もなくこれである。隅の高い構えの定石になったあと、自分がいつもやるのはヒラきではなく、隅の空いている相手の石へのカカリ一辺倒である。辺にヒラくよりもさっさと相手の石にカカって成果をあげたいという想いがあるのだ。だがこれがまずい。確かにさっさとカカるというのも大場といえば大場なので、間違いではない場合もあるだろう。しかし高く構えたひと隅の一団と、もう一方の隅にカカった石とではかなりのスペースがある。結果、高い構えの一団が即座に反撃を食らうことが多いのだ(ひどい時はつぶれる)。自分の損得判断がいかに危険なのか、本書によって改めて思い知らされた次第である。あれ、自分って本当に五段もあるのだろうか…

弱い石をつくらない

 「常に自分の石に眼があるかを確認すること」。これはとある囲碁YouTuberがいつも主張してくれていることである。シンプルな言葉だが、とても良い姿勢だと思う。これが本書においても言葉を少し変えて登場しているので、個人的に説得力がとても増した。とかいいつつ、自分のように中途半端にハンマーを振りまわしている人間はこの言葉を忘れがちである。自分の弱い石を顧みずに相手の意志を取ってやろうと攻めていき、その攻めが途切れると、逆に自分の弱さを咎められてしまうのだ。基礎がしっかりしていない砂上の楼閣は悲しいかな、いとも簡単に、音も立てずに崩れ落ちてしまうのだ。もはや一手ごとにこの言葉を思い出し、指差し確認さながらに思い出したいものである。

厚みをうまく使う

 自分は厚み派と実利派、どちらかと言われると厚み派に分類されると思う。しかしそれは厚み戦略が好きだというだけで、それで勝てているかどうかはまた別の問題である。自分が厚みを好む理由のひとつに、今村俊哉先生の棋風がある。今村先生は「世界一厚い碁」と言われるほどに、壮大な厚みの碁を打ち、さらにその活かし方が超絶うまい人である。厚みは即効性がなくても、後半につれてじわじわと効果を発揮してくるのが醍醐味だ。ポケモンで例えると「どくどく」を放って自分は悠長に回復しつつ、相手が後半になって徐々に苦しみながら倒れていくのを見るのが大好きな自分にとっては、考えてみればぴったりな戦略だったのだ。
 しかし自分が厚み戦略を取ろうとすると、一筋縄ではいかない。厚みをただ築いて、まったく活かせずに終わってしまうのである。かつて数学が苦手だった自分は問題が解けず、友人に相談すると「ただ公式にあてはめるだけだよ?」と言われたのを盲信して、ただ公式にあてはめてその後どうしたら良いのかまったくわからずに終わっていたあのころを思い出す。囲碁においても同じ現象が発生しており、中盤が終わったころには働かずに役目を終えかけている万里の長城が盤上に残っているのだ。そんな悩みがあったものだから、本書の内容はとても参考になった。カカりの方向だけでなく、その後どうやってスケールを拡大していったら良いのか、数手にわたって解説されているのだ。もともとロマンがあると思って選んだ厚み戦略であったが、石の方向をきっちりと守ることでさらに魅力が増えそうだ。

終わりに

 基礎というのは決して簡単なものではなくて、実際に身につけるには相当な時間を要する。囲碁を始めてなまじ勝てるようになってくると、どうしてもたくさん打つことを優先して、基礎をおろそかにしがちである。ドラクエでもなんでも、質の高い装備を持っているとどんな強敵にも自身を持って挑めるように、囲碁も質の高い知識を身に着けて対局に臨みたいものだ。


それでは。

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