厚み戦略の教科書 | 世界一厚い碁の考え方 #54

 1月5日は囲碁の日であり打ち初めの日らしいので、囲碁に関する書籍を語る。囲碁には色々なプレースタイルがあるが、大きく分けると「実利派」と「厚み派」に分かれるだろう。戦術を二分しても、ふたを開けてみると碁打ちの中で多いのは実利派か中間のバランス型であって、厚み派はあまり見かけることがない。

実利派の棋士の代表格は趙治勲先生だろうか。序盤に稼いで稼いで、最後に相手の陣地にドカンと打ち込んで凌ぐのが彼のプレースタイルである。対して厚みを武器に戦う棋士は武宮正樹先生が挙げられる。盤面に宇宙よろしく大規模な模様を築き上げ、その模様を活かして相手の石を攻める。

だが、自分にとっては本書の著者である今村俊哉先生こそ厚みのプロフェッショナルであり、自分の碁の理想像である。だが、一介のアマチュアが生半可な気持ちでプロの真似事をすると大やけどしてしまうだろう。それでも、少しでも今村先生の教えにあやかりたいと思い、手に取ったのが本書である。

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本記事のサマリー:

  • 囲碁プレイヤーは実利派が多い
  • どんな時もどっしり厚みを構えることが大事

読んだ本

  • タイトル:世界一厚い碁の考え方
  • 著者:今村俊也

感想云々

実利vs厚みの終わりなき戦い

 「実利」とか「厚み」とか、なんの前触れもなく専門用語を使ってしまったのだが、それらについて軽く説明せねばなるまい。「囲碁は陣取りゲーム」ということは感覚的に理解されていると思う。これをお金に例えるならば、「最終的にたくさんお金を稼いだ方の勝ち」というシンプルなルールだ。

そして、前述のワードも同様の例えるならば「実利≒現金」「厚み≒投資」である。「実利」は現金そのものだから、稼げば稼いだだけ最終結果に直結する。一方「厚み」は即座に現金が手元に来るわけではない。しかし、上手く運用すれば将来莫大な現金を手にすることができる(可能性がある)。

実利を優先して現金を地道に稼いでいくか、焦らず厚みを作って投資を膨らませるか。いずれにもメリットがあるので、どちらが良いとかは特にない。最終的に相手よりも一円でも多く現金を稼いでいればいいのだから。その人の好み(ひいては性格)に合ったスタイルを選択すればいいのである。

じゃあ何故自分は厚みを重視するかって?
ロマンだよ!!!!!!

厚みに徹する大事さ

 自分は厚み重視だと前述した。が、本書を読んで反省したのは、まだまだ厚みに徹することができていなかったということだ。対局中に厚みを築いている間、相手はその間せっせと実利を稼ぐような構図になることが多い。そうすると「自分も現金を稼いでおいた方がいいのかな…」とか「相手の邪魔してやりたいな…」とか、徐々に邪念が生まれてくるのである。結果、厚みとも実利とも取れない中途半端な手を打ってしまうのだ。

ところが今村先生は違う。相手がいくら実利を稼ごうが何をしようが、ブレずに厚みを持たせる手を打つ。アマチュアの自分からしたら「そんなスピードの遅そうな手でいいの!?」と思ってしまうような、冷静沈着な手を選択するのだ。しかしそう進めて最後には結局勝利してしまうのだから、説得力が非常にあるのだ。

相手の動きに惑わされることなく、迷わず我慢の一手を選ぶ。それが今村先生の強さの根源であると再認識した。人生もこれくらい「厚み」重視の戦略を持たせたいものだ…

終わりに

 「大局観」という言葉は囲碁とか将棋でしか聞くことがない。だがその中でも、「厚み」戦略にこそぴったりな言葉だと思っている。今はただロマンを求めて厚み重視の戦略を取っているだけだが、ひとたび厚みの活かし方を身に着けたらどんなに楽しいだろう。対局中にバチバチにはまって勝利することができたらどんなに気持ちいいだろうか。そう考えるだけで囲碁の勉強のモチベーションが上がりそうだ。


それでは。

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