企業でイキイキと働くには? | 日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか? #64

 「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」。これは経営コンサルタントに冷静に分析されるまでもなく、現場で働いている人間がひしひしと感じているだろう。でも実際に働いていると、モチベーションが上がらない理由をなかなか深堀りできない。またモチベーションが低い理由を薄々と肌で感じていても、家庭環境だったり年齢だったりと、いまさら大きな方向転換は難しいという人もいるだろう。そうなると、「モチベーションは低いが、日本企業とはそういうものだ」と自分に言い聞かせて働くしかない。
 自分はファーストキャリアとして今の企業に就職して早7年である。転職を経験してこなかったので、自分の中の職場環境のサンプルは非常に乏しい。が、自分の職場ひいては事業全体を見渡しても、やる気に満ち溢れていて、イキイキと働いているような社員は残念ながらほぼいない。また自分は現在労働組合の執行役員にも片足をつっこんでおり、役職の兼ね合いで組合員の方々とコミュニケーションを取ることが多い。その時の会話内容の9割9分は会社への愚痴なのだ。そりゃあ世の中に完璧な企業などひとつもないのだから、多少は愚痴があってもいいだろう。しかし、どうしてここまでになってしまうのだろうか…自分が組合の執行役員になり色々な声を聞くようになって、改めて表題のテーマについて触れてみたくなったのである。

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本記事のサマリー:

  • 本書の内容は思い当たるものばかり…
  • FBや感謝が少ないのって、その人の性格のせいにされがちだよね
  • 何もせず不満だけ言うのはNG←マジでこれ

読んだ本

  • タイトル:日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
  • 著者:ロッシェル・カップ
  • 出版社:クロスメディア・パブリッシング

感想あれこれ

グサグサと理由を指摘してくる本書

 本書を読んで感心して、かつ悲しくなったのは著者の「ここが変だよ日本企業」の数々である。ちなみにこれはもちろん褒め言葉である。日本企業の内部事情を徹底的に分析して、そこから導き出されるモチベーション低下の理由を著者が淡々と述べてくれている。その精度がとても素晴らしい。一方でその分析が正確であればあるほど、正論パンチによる我々に対するダメージは大きい(ちなみに淡々と述べるスタイルもここでは厳しい)。これがまったく関係のないことだったら笑いながら読み飛ばすことができただろう。だが悲しいかな、著者の主張(というかもはやダメ出し)はほとんど自社にあてはまっている。まるで自社の従業員だったのだろうか?と思うほどにだ。おそらくいずれの日本企業で働いている人が同様にそう感じるほど、普遍的な内容なのだろう。
 前述のとおり、本書ではモチベーションの低下の要因がたくさん挙げられている中で、自分に近いところで考えて見ると、一番モチベーションの低下にインパクトがあると思えたのは休暇の考え方だ。本書によれば、ネットフリックスの社員は休暇に制限がないそうだ。なぜならネットフリックスは「社員が何日働いたかではなく、どれだけの仕事をこなしたか」ということにフォーカスしているからだ。また長い休暇を取っている間に触発されて、大きなアイデアを持って職場に戻ってくるというケースもある。それらを踏まえると、自由と責任の考え方が日本企業とだいぶ異なっていることがわかる。
 ネットフリックスの休暇制度をインプットしたうえで自職場を振り返ると、休暇にとても後ろ向きである。日数だけ見れば、年単位でわりと潤沢に付与してもらっているはずなのだ。だが問題は、それを駆使して能動的に休むということがとても難しいということだ。その理由として「休暇の付与日数は有限なのだから、できるだけストックしておきたい」という考え方が根底にあるからだ。日本企業の社員の大半にとって休暇とはリフレッシュするためのものではなくて、あくまでセーフティネットの役割なのだ。その考え方を取っ払えない理由は様々あるだろうが、個人的には上限が決まっているのが最大の理由だと思っている。正直上限を解放しない限り、能動的に休暇を取ろうと方針転換するのはもはや厳しそうだ。それがすぐに変わらないのであれば、休暇制度によるモチベーションの低下は引き続きずるずるといきそうである。ただ「休暇日数の制限なし」というのはいつでも社員をクビにできる米国の企業ならではの制度でもあるので、日本企業での導入があまり現実的でないのがもどかしい…

「努力は当たり前」という文化

 努力は「当たり前」とされ、フィードバックや感謝が不足しがちというのも、モチベーションを低下させる要因となるらしい。確かにこれも自分の会社で感じていることだ。そしてもっと良くないと思うのは、フィードバックや感謝をしないのを、自分の性格のせいにする人が多めということである。「あまり感謝を述べるのが得意ではない」とか「もともとコミュニケーションが苦手」だとか、根っからの自分の性格がそうさせないのだから仕方ない、という考えから抜け出さないのだ。確かに性格上の問題もあるのかもしれない。しかし、コミュニケーションとか話術という類は、あくまで「スキル」である。鍛錬によって習得できる技術だと思うのだ。そのため、コミュニケーションが苦手という人は性格の問題でできていないのではなく、ただただスキルの習得に向けて努力を怠った結果だという、少し穿った見方をしてしまうのである。
 とはいえ、「じゃあ明日から感謝の言葉をバカスカ増やそう!」というわけにもいかないだろう。面と向かって感謝なんて、とりわけ日本人は苦手そうだ。最近ではわざわざ感謝の意をポイントとして相手と贈り合うという、(結構大規模な)感謝システムなるものが存在しているくらいである。最初は「なんだそのシステム!?」と思って正直冷ややかな目で見ていた。だけど、意外とそういうシステムが「努力当たり前」論を崩してくれるいいきっかけになるのかもしれない。

不満だけで立ち止まらない

 本書で著者がモチベーション低下の要因を並べたうえで、最後の最後に主張するのは「何もしないで不満だけを並べることは避ける」ということだ。不満だけで立ち止まらずに、自分の進路に主体的になることが重要だと言っているのである。自分はこれが本書の中で一番良いメッセージだと思った。というか、こうやって文章を書いている途中でもこのメッセージを目の当たりにして反省することがとても多いと思っている。
 我々の多くは会社で何かあると、たいていは「会社がなんとかしてくれるだろう」と思ってしまう(自分もその考えが強かった)。そういう考えがベースにあって、有事の際に実際に何もしてくれないとなると、不平不満が多発することになるのだ。だがそもそも、会社がなんとかしてくれるだろうと考えていること自体がナンセンスだ。本来会社と従業員は利害関係でしか結ばれていないんだから。そのため、もし自身が会社に不満があって変えようというのなら、自分が偉くなって無理やり変えてしまうか、自分が出ていくしかないのである。しかし前者のように経営方針を変えられるレベルの出世を実現しようと思ったら、大企業になればなるほど難しくなる。であれば、自分を流動的な存在に変えてしまう方が圧倒的に楽だろう。不満を述べている暇があるなら、どれだけ会社が傾こうが、会社にどれだけ振り回されようが、しぶとくキャリアを豊かにする方法を考えるのが吉なのだ。やばい、自分にどんどん突き刺さってくる…

終わりに

 日本企業におけるモチベーションの低下の要因が本書によって改めて浮き彫りになったが、正直ため息しか出てこない。だが、それらの要因と向き合うことが第一歩なのだろう。また本書はその内容自体もいいのだが、実はその中で別途紹介されている書籍もとても良い。それらの中からいくつか手にとってみたが、いずれも今後のキャリアに大いに役立ちそうな内容だった。読書を繰り返していけば、そうやって芋づる式にヒントが見つかっていくこともあるのだと、ビジネス書に触れるメリットを改めて実感した次第である。


それではまた。

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