大人になると、健康診断を受けた時に着目するパラメータが子供の頃と異なっていることに気がつく。子供の頃はもっぱら身長とか体重ばかり気にしていたものだが、大人(というか社会人)になって気にし出すのはASTとかALT、そして尿酸の数値とかである。自分はお酒大好き人間なのであるが、今までは上記のパラメータをなんとか正常値に押し留めて来たつもりである。だがその中で、自分は肝臓の異常値を2回叩き出したことがある。1回目は、前日に琵琶湖一周(通称「ビワイチ」)をした時。約9時間のビワイチによって壊れに壊れた細胞たちが血液中に流れ出し、異常値ラインの2倍近くになった(後から産業医に嘲笑された)。その1回目は原因がはっきりしていたものだが、2回目はシンプルな異常値であった。「お酒を良く飲むし、30代に突入したし、そろそろセーブしながら生活する時が来たか…」と脂肪肝やら肝硬変やら怖い病気にビビり散らかして手に取ったのが本書である。
「沈黙の臓器」という呼び名は有名だが、何も言わない陰キャさながらの肝臓の大事さとなる所以を知っているか否かで、日々の生活スタイルも大いに変わってくることだろう。

本記事のサマリー:
- 「肝臓は何でも浄化するフィルターだから壊れたらマジやばいぜ」←真理
- 痩せるんなら運動の消費カロリーよりも基礎代謝上げようぜ
- 肝臓を揉んで元気になるかは分からない。でも他にもいいことあるよ
読んだ本
- タイトル:病気を治したいなら肝臓をもみなさい
- 著者:高林 孝光
感想云々
見逃しがちな肝臓の働き
健康診断で異常値が出るまでその大切さに気がつくことが難しいのが肝臓という存在である。が、掘り下げると肝臓はとんでもない働きものである。細分化すると肝臓は500にもおよぶ仕事をしているが、とりわけ大きい仕事は「栄養の代謝」「解毒」「胆汁の分泌」である。専門用語が多いが、ざっくり体内でフィルターのような役割と思えばいい。さらに大事なのは、肝臓は再生する臓器であること。肝臓の7割を切除しても、元気な肝臓なら大蛇丸のように再生してくれるのだ。非常にありがたい話である。だが、逆にこの肝臓が傷んでフィルター機能が失われてしまったらどうなるだろうか?簡単に言うと、ストレスで耳鳴りが起き、めまいを覚え、不眠になり頻尿になり、物忘れが増え、太り、シミが増え、クマもニキビもでき、白髪が増えることになる。恐怖で脅すわけではないが、個人的には何も言わないで淡々と仕事をこなす肝臓に対し、ブラック企業さながらに申し訳ないことをしていたな、と少し反省した。逆に言えば、このフィルターさえ正常に保つことができていれば、上記の悩みなんて一発で吹っ飛ぶのだ。それってすごくねー!?
基礎代謝による消費>運動による消費
ダイエットを試みる人がまず頑張るのはとにかく激しく動いてカロリーを消費することだろう。だが、これは実はあまり効率的ではない。なぜなら、日常的に消費するカロリーは基礎代謝によるものの方が大きいからだ。その割合は6割に及んでいる。そのためがむしゃらに動いて頑張って運動カロリーを稼ぐよりも、基礎代謝を上げる方にシフトしていった方がダイエットが捗る可能性があるのだ。ここまで読んで察しの良い人なら気がつくだろうが、この基礎代謝は肝臓に刺激を与えることで良化することができる。普通のフィルターよりももっと強靭なフィルターに変えることができれば、その分毒素や脂肪を処理する能力が増えるのは、想像に難くないであろう。とやかく言う前に体は血行ゲーなんよ。血行ゲー。
実際に肝臓を揉んだ効果は?
本書には「どうやって物理的に肝臓に刺激を与えて活性化させるか」というマッサージのハウツーが書いてある。そしてそのマッサージを実際に行って、健康状態が改善したという例もいくつか載っている。「それならば自分も」と自分も前のめりになって本書のマッサージをやってみた。ところが自分の場合、残念ながらあまり目立った効果を感じることができなかった。だが、それはマッサージに効果がなかったとも言い切れないのだ。実は自分が2回目の肝臓の異常値を叩き出した時から、色々肝臓を労る行動を試みた。一番の原因となっているであろうお酒も控えたし、運動も増やしたし、緑茶とかニンニクとか肝臓にいい食べ物もたくさん食べた。そして本書のマッサージもその一環として実施している。結果として翌年の健康診断では何事もなかったかのように正常値に戻った。だが色々やりすぎたせいで、結果的に何が効いたのか分からない。そのため、肝臓のマッサージに効果があった可能性も捨てきれていない。
だが、このマッサージを覚えて確実に良かった側面もある。それは、以前と比べて肝臓を労る行為を自然と心がけるようになったことだ。よく投資を初めてからマネーリテラシーが身につき、自然と無駄遣いを減らすようになったという事例がある。今回の場合も同じで、一度肝臓リテラシーを手に入れさえすれば、「これは肝臓に負荷がかかりそう」と判断した場合に自然と節制するようになったのだ。肝臓マッサージに効果があるかはまだ「?」であるが、本書を通して手に入れたこのリテラシーは、過言でなく今後一生効果を発揮してくれるであろう。
終わりに
ビジネス書に即効性があるかどうかはまだ分からないのだが、この手の本は割と即効性があり、すぐさま実感を得られるものも多く存在している。だからライフサイエンスの文献は読んでいて楽しいのだ。本書を読んで、今までパワハラの嵐よろしく無理をさせていた肝臓に対し、これからは歩み寄って行きたいものである。
それでは。